バイオ科学ニュース
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第39号 |
2002年10月 |
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ポップコーンが糖尿病を予防 |
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立った仕事が新生児に影響 |
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ぜんそくはママのせい? |
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「大きさ」が問題 |
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子宮筋腫の遺伝的原因 |
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癌に対する新療法 |
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牛がミルクの代わりに薬を生みだす |
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コバルトが植物に悪影響 |
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ポップコーンが糖尿病を予防
全粒穀物をより多く食べると、それだけ2型糖尿病になりにくくなることが、新しい研究結果から明らかになった。
我々が毎日食べる食物が糖尿病の危険性に影響を与えると信じられている。 以前の2つの独立した研究で、より沢山全粒穀物を食べた女性は2型糖尿病を発症する可能性が低いことが明らかになっていた。 けれどもこの関連性は(まだ)男性では証明されていなかった。
そこで米国マサチューセッツ州 ボストン市のシモンズ大学の研究者達は1986年に糖尿病あるいは心臓血管病に罹っていなかった年齢40歳から75歳の男性医療従事者42,898人を1986年から1998年まで追跡調査した。
研究者達は4年ごとに食物摂取頻度アンケートを使って男性医療従事者達の全粒穀物と精製された穀物の摂取について情報を集めた。
全粒穀物食品の典型的な例はブラウンライス、全粒粉のパン、シリアル、オートミールとポップコーン等である。 これに対して精製された穀物食品の典型的な例は白パン、マフィン、パンケーキ、ワッフル、スウィートロール、ビスケットやピザである。
研究結果に影響を与えると考えられる他の情報、例えば、 年齢、運動、喫煙、アルコールの消費量、そして家族の糖尿病の病歴が2年ごとにアンケートから同じく集められた。
この追跡期間中に、1,197ケースの糖尿病が見いだされた。 研究結果に影響を与える要因を修正後、全粒穀物を最も消費した男性は最少量を消費した男性より42%糖尿病を発症する可能性が低いことが判明した。 逆に、精製された穀物食品の消費は糖尿病の予防に役立たなかった。
全粒穀物の予防効果は肥満の男性に対しては幾分弱まったが、その予防効果が同じく確認された。 この予防効果は全粒穀物が多くの繊維とマグネシウムを含んでいるためである、と研究者達は考えている。
他の疫学研究でも同じく全粒穀物の摂取が脳梗塞と冠状動脈疾患の予防になることが分かっているので、もっと全粒穀物食品を消費してみてはいかがだろうか。
Reference: Teresa T Fung et al., Whole-grain intake and the risk of type 2 diabetes: a prospective study in men, Am J Clin Nutr, September 2002, Vol. 76, pp535-40.
立った仕事が新生児に影響
中国で行なわれた新しい研究より妊婦が仕事中に長時間立っていると小さい赤ん坊が生まれることが明らかになった。
過去の研究によれば妊婦が行なうある特定の身体活動が赤ちゃんの出生時体重に影響を与えることが分かっていた。 米国のハーバード大学公衆衛生学部のデビッド・クリスチアニ(David Christiani)博士と中国と韓国の共同研究者達はこの関連性についてさらに詳しく調査した。
研究者達は北京の燕山石油化学株式会社で働いている妊婦1,222人と1996年5月と1998年12月の間に会社の病院で生まれた彼女達の赤ん坊を調査した。
研究では妊婦達の仕事に関連した身体活動(立つこと、座っていること、腰を曲げること、何か持ち上げる動作、そしてしゃがむこと)が評価された。
研究に参加した生まれたての赤ん坊の平均体重は3,417グラムであった。 また研究では在胎月齢が37週から42週の間に生まれた赤ん坊だけが比較された。
赤ん坊の性別、母親の年齢、母親の肥満度指数(BMI) と親の教育レベルのような潜在的混在変数を調整した後で、仕事中に3時間以上立っていることが平均して18グラム赤ちゃんの出生時体重を減らすことが発見された。
この研究結果は科学的にみれば面白いけれども、このような小さい体重減少は幼児に重要な健康問題を起こさないであろう。
Reference: Eunhee Ha et al., Does Standing at Work During Pregnancy Result in Reduced Infant Birth Weight? OEM, September 2002, Vol. 44, pp815-21.
ぜんそくはママのせい?
もし幼い子供がぜんそくを発症したら、それは(遺伝的に)母親のせいであるということが新しい研究から明らかになった。
米国マサチューセッツ州ボストン市のブリガム・アンド・ ウイメンズ病院(Brigham and Women’s Hospital)の医師達は幼い子供がペットへさらされることと喘鳴(ぜいぜい息をすること)との関連性を調査した。
幼児505人が1994年9月から1996年8月の間に研究に参加し、そのうち448人が出生時から5歳まで追跡調査された。
医師達は「母親がぜんそくの経歴を持っていて生後2-3カ月以内に猫あるいは猫のアレルゲンに家でさらされたことのある子供達は喘鳴のリスクが成長するにつれて次第に高まること」を発見した。 例えば、その危険性は5歳までに(母親がぜんそくを経験したことのない子供達に比べて)3倍増加した。
しかしながら、母親がぜんそくを経験したことのない子供達には喘鳴の リスクがみられなかった。 興味深い事に父親のぜんそくと犬と犬のアレルゲン へさらされることは喘鳴のリスクに対してなんの効果も与えなかった。
医師達は小児期の喘鳴は(その可能性が強いが)必ずしもぜんそくを意味するものではないと注意した。
最後に医師達 は「母親がぜんそくを経験したことのある幼児は3歳までにぜんそくを発症する可能性が高い」という結論を出した。
Reference: Juan C Celedon et al., Exposure to cat allergen, maternal history of asthma, and wheezing in first 5 years of life, THE LANCET, September 7, Vol.360, pp781-2.
「大きさ」が問題
ヒトを含めたほとんどの哺乳動物ではオスがメスより早く死ぬ傾向が強い。 それはある1つの理論によると、メスの獲得と縄張りのためにオスとオスが競争するという危険な行動のためだという。
しかし新しい研究で、オスのより大きい体の大きさのためにオスは寄生生物へ感染し早く死ぬことが明らかになった。
野生の哺乳動物のオスがメスより寄生生物(節足動物類、寄生蠕虫類、単細胞寄生虫類)に感染する傾向が高いという証拠に基づいて、スコットランドのスターリング大学の研究者達は350以上の科学論文を分析することによって、哺乳動物のオスとメスとの寄生生物の感染率と死亡率を比較した。
その結果メスより多くのオスが寄生生物へ感染して死んだことが分かった。
その一つの理由は、オスは免疫機構を抑えるテストステロン(男性ホルモン)をより多く有しており、そのためにオスは寄生生物と伝染病によりいっそうアタックされ易いためである。
もう1つの理由は体がより大きいオスが寄生生物に汚染されたエサをより沢山食べるのでオスが寄生生物の良いターゲットなっているということである。
しかしながら、研究者達はメスがオスより大きい若干の種(コウモリとラット)では、メスの方が寄生生物によりいっそうアタックされ易いことを発見した。
したがって最初の説(説明)は辻褄が合わない。そこで体の大きさが寄生生物の感染と死因に関連しているように考えられる。
この研究からBKNの編集者は「もし体の大きさが生存のために重要な決定要因であるなら、日本人は比較的体が小さいので先進工業国の間で日本が最も長寿国であっても不思議はない。」と推測した。
異なった国々で体の大きい人々と小さい人々の死亡率を比較してみると面白いかもしれない。
Reference: Sarah L. Moore and Kenneth Wilson, Parasites as a Viability Cost of Sexual Selection in Natural Populations of Mammals, Science, September 20 2002, Vol. 297, pp2015-8.
子宮筋腫の遺伝的原因
骨盤の痛み、極端な出血、極端な尿の圧力、不妊症、そして流産を起こす良性の腫瘍である子宮筋腫の形成に145ケの遺伝子が関与していることが新しい研究によって判明した。
全女性の最高70%が子宮筋腫を発症し、子宮摘出術を含めた治療を求めると言われている。 残念ながら、子宮筋腫の原因は不明である。
「遺伝子アレイ」と呼ばれる特別な技術を使って、米国のフロリダ大学の研究者達は子宮摘出術を受けた女性9人から集めた子宮筋腫の組織と健康な子宮組織における12,000ケの遺伝子の発現を同時に比較した。
その結果、健康な組織と比較して子宮筋腫の組織で67ケの遺伝子が2倍以上過剰に発現され78ケの遺伝子が2倍以上過小に発現されたことが発見された。
研究者達は過剰に発現された遺伝子が異常な組織の成長に関与し、過小に発現された遺伝子が標準的な子宮組織の収縮に関与しているとデータを解釈した。
過剰に発現された遺伝子の中に、研究者達は同じく3つの父系遺伝子(dlk、 IGF2とMEST)を見つけた。 もし母親からではなく父親から受け継がれるこれらの遺伝子が子宮筋腫を起こすなら、父親が(遺伝的に)子宮筋腫の原因であるといえるかもしれない。
多くの遺伝子が子宮筋腫に関与しているように思われるけれども、子宮筋腫の薬を開発するのにこの発見は第一のステップになる。
Reference: John C. M. Tsibris et al., Insights from gene arrays on the development and growth regulation of uterine leiomyomata, Fertility and Sterility, July 2002, Vol. 78, pp114-121.
癌に対する新療法
米国メリーランド州ベテスダにある国立癌研究所のスティーブン・ローゼンベルグ博士の研究チームは標準的治療が効かなかった転移性悪性黒色腫(皮膚がん)患者を治療することに成功した。
研究チームは「養子移植法 」(adoptive transfer)として知られている実験技術を使った。 まず研究チームは患者から黒色しゅの小片を得て実験室で腫瘍特定のT細胞を増やした。 次にこれらの増殖されたT細胞が患者に与えられた。
また、患者達はT細胞の増殖を促進するインターローイキン2(IL-2)と呼ばれるタンパク質を高服用量同じく与えられた。
研究者達はあと2-3カ月だけの命の黒色腫患者13人にこの治療を用いた。
その結果13人の患者中腫瘍が6人の患者から消滅した。 そして別の4人の患者から若干癌が姿を消した。 けれども残りの患者3人はこの治療が効かなく死亡した。
この治療法は確かに実験的で100%の治療法ではないけれども、スティーブン・ローゼンベルグ博士はこの戦略が同じく他のタイプの癌(乳癌、前立腺癌、肺がん)を有する若干の患者にうまく働くものと非常に楽観視している。
同様に、この治療法はエイズのような伝染病を治療するために使われるかもしれない。
Reference: Mark E. Dudley et al., Cancer Regression and Autoimmunity in Patients After Clonal Repopulation with Antitumor Lymphocytes, Science Express on line, September 19 2002.
牛がミルクの代わりに薬を生みだす
牛は人間が消費するミルクと肉を生産するために通常飼育されている。 けれども日本のキリンビール株式会社と米国のベイラー医科大学とマサチューセッツ大学の研究者達は共同で大量にヒトの免疫抗体を作り出す牛を作りだした。
現在ヒトの免疫抗体(免疫グロブリン)が自己免疫疾患と炎症疾患を治療するために広く使われている。 しかしながら人間の血清からのその供給には限度がある。
そこで組換えDNA技術と核移植技術を併用して研究者達はヒト免疫グロブリン遺伝子の全セットが組みいられたヒト人工染色体を有するトランスジェニックの牛を作ることに成功した。
研究者達 は主にトランスジェニックの牛の脾臓で(他の組織でもそうだが)ヒト免疫グロブリン遺伝子の発現を確認した。
これらのトランスジェニックの牛に特定のヒトの病原体に対するワクチンを与えることによって、広範囲のヒトの病気を治療する免疫抗体を大量に作り出すことが将来可能になるかもしれない。
しかしながら、この方法の欠点はトランスジェニックの牛が牛の免疫抗体、ヒトの免疫抗体、そしてキメラ免疫抗体を生み出してしまうということである。
だから研究者達は牛の免疫グロブリン遺伝子の発現を抑制する技術をまだ開発する必要がある。
Reference: Yoshimi Kuroiwa et al, Cloned transchromosomic calves producing human immunoglobulin, Nature Biotechnology, September 2002, Vol 20, pp889-4.
コバルトが植物に悪影響
トマト植物を実験モデルとした研究より、スペインのミグエル・ エルナンデス大学(Miguel Hernandez University)の研究者達はコバルト(金属の一種)が植物に(悪)影響を与えることを実証した。
特に農民がコバルトを含んでいる下水汚泥を肥料として時々用いるから、農地のコバルト汚染がここ20年間増加しているという。
下水汚泥は下水処理工場で人の排出物と工場の化学廃棄物が処理され廃水が除かれた後に残ったどろどろして悪臭に満ちたスラリー(泥しょう)である。 そして下水汚泥は通常肥料に望ましい成分ホスファートや硝酸塩を含んでいる。
スペインの研究者達はトマト植物に対する下水汚泥とコバルトの影響を調査した。 研究者達は敏感な指標となる光合成の活性(葉緑素とカロチノイドの量)に焦点を合わせ調査した。
研究者達は108ケの鉢にトマト植物(Lycopersicon esculentum)を栽培して、それらを3つのグループに分けた。
その3つのグループとは (1)下水汚泥を付加 しなかたコントロール;(2)乾燥した土壌100gに対して下水汚泥 2gを付加して生育したグループ;そして(3)乾燥した土壌100gに対して下水汚泥 4gを付加して生育したグループである。
さらに、コバルトの増加する濃度効果を調べるために、研究者達はそれぞれのグループに4つの異なった濃度のコバルト(0、 50、100、200mg/kg)を加えた。
成長するにつれて、トマトの葉の中の葉緑素とカロチノイドの量が分光学的 に調べられた。
予想したように、下水汚泥による肥沃化のためにトマトの葉の葉緑素とカロチノイドの量が増加したことが発見された。
しかしながら、これらの色素は汚染物質のコバルトの量が増加するにしたがって減少した。 このネガティブな効果は、2番目のグループと比較して3番目のグループでも見られた。そのことは3番目のグループのより多くのコバルト量がこの効果に貢献したものと考えられる。
ここで実証されたように、コバルトは植物の健康に害を及ぼすようである。 一般に下水汚泥はコバルトと他に人や植物にとって有毒な化学物質を含んでいるから、農業の下水汚泥の使用は再評価される必要があるかもしれない。
Reference: A. Perez-Espinosa et al., EFFECT OF COBALT ON CHLOROPHYLL AND CAROTENOID CONTENTS IN TOMATO PLANTS, Journal of Plant Nutrition, 2002, Vol. 25 (9), pp1933-40.
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